あの後は勉強が終わって日向を帰らせた

久しぶりに1日が早く感じた気がする

テストが上手くいくようにって思いながら今日を過ごしていた

そしてメッセージがくる

『おかげさまで出来た』と日向から。

私はずっと返してこなかったメッセージに初めて

『よかった』

そう返事を送った

それからの日々は日向が部活の合間に顔を出す

部活の愚痴

先生のモノマネ

自身の出来事

外の温度や出来事

日向は私に病室の外の世界を持ってきてくれた

でも1つ、引っかかった

紬の話を一切しないこと

それに加えて部活の合間に来ていることによって紬に会う時間さえ奪っているのではないか

そう思えた

今日も朝から部活をしてその足でここに来てくれている

「ねぇ、日向」

日向は窓際に頬杖をついてうつらうつらとしていた

「あ、ごめん。寝てた?」

日向は無理して笑う

「なんで…ここまでしてくれるの?私、日向と紬に…」

私の口を開けば人差し指を私にあててくる

「俺の前で自分を追い詰めるようなこと言わないで。俺がしたくてしてんの」

そう言ってまた窓際に頬杖をついた

「ごめん」

「ありがとうだけでいいよ、ごめんはもういらないし聞きたくないよ」

日向は静かにそう言った

「…紬のとこ行かなくていいの?」

私は恐る恐る、聞いた

「…紬がそうしろって言った」

日向は少し答えるのを躊躇いながらも答えてくれた

「え…?」

「紬はずっと月を心配してる、だけど月が避けてるから俺伝いでもいいからって…さ」

日向は少し悲しそうに目を伏せた

「ごめ…」

私は謝りそうになったところを口を塞いだ

「そんなに紬が気になるなら、話してやれば?…多分喜ぶぞ」

少し口元を緩ませながらそう言った

「私にはそんな資格ないよ、私が近くいれば傷つく」

私は下に俯いて続ける

「紬から日向を奪おうとした。悪口だって言ったし1人になるように仕向けたんだよ?」

布団をギュッと握りしめた

私の心の中は雨模様だ

苦しくてギュッと胸が締め付けられる

日向と久しぶりに会ったあの日とは違う苦しさ

「自分のことしか考えてなくて…紬を苦しめた」

日を浴びすぎた私の桜にある日、カラスが止まった
その部分だけが黒くて異質のように見えた

それが何匹も集まって、綺麗な桜が黒く染まって…消えた今…

見てくれる人は居なくなった

「大事にしなきゃいけない人間を手放したのに…今更、私のワガママで振り回したくないの」

それが今の私

そんな私に日向は日差しをくれる

また咲き誇れるように。

もう散りそうな私に日向は優しくまだだよって照らして人を呼び寄せてくれる