日向は車椅子を持ってきた
「体調、あんまよくねぇんだろ」
そう真面目な顔で言ってくれた
私はありがとうと伝え
ノートと教科書、筆記用具を持って座った
「初めて人の押すからさ、怖かったら言ってな」
優しい笑顔で日向はそう言ってくれた
学校にも行けない、外にも出られない
そんな私を連れて日向は暖かい日差しが差し込むデイルームへ連れ出してくれる
「俺が連れ出してやれんのはここまでかあ」
少し悔しそうにそう日向は向かいの席に座る
「ここまででも十分だよ、ありがとう」
日向はコクっと頷く
そして少し前までの日常のように私達はテスト勉強会をした
日向は教えるとスラスラ解いていく
ついこないだまでの風景だったのに懐かしくてたまらない
私は頬杖をついて、そんな日向の姿を見つめていた
「…なにそんな見てんの」
日向は目を勉強しているノートに目を落としたままそうフッと笑った
「勉強してるとき、よく見てたよな」
私はドキッとする
見惚れてたなんて口が裂けても言えなくて
誤魔化す言い訳さえ見つからなくて
ドキドキの胸の音だけが聞こえて
その音だけが日向にも伝わっているかもしれない
「俺はその時間が好きだったりするけどね」
こちらに顔を上げて優しく笑う日向はやはりずるい
もう諦めたはずなのにまた…
「私も好きだよ」
その“好き”に含まれている意味は単純な返答ではないだろう
でも伝わらなくていい
伝わったって困らしてしまうだけだから
もう自分の立場は知っている
「あら、青春でいいわね」
そんな言葉を入院しているおばあさんが声をかけてくる
「ありがとうございます」
私達はそう伝えるしかなくて
少し2人で照れて笑い合った
「俺ら、カップルみたいにみえてんのかな」
そう日向は思わせぶりな言葉を言う
「…そだね」
私は精一杯の返答をした
これ以上バレるわけにもいかない
きっと日向を苦しませてしまう
大丈夫、私は普通だよ
また仮面をかぶったっていい
日向が幸せなら
どこかで聞いた事がある
好きな人は幸せにしてもらうんじゃなくて
幸せにしたい人だって
私は君に幸せになってほしい
だから今だけは許して
最後のワガママだから
今だけは
________誰も日向との時間を邪魔しないで
もう私は満足だから
「さあ続き、やるよ」
その一言で日向はへーいと言いながらまた目線を下に落とした
優しい日差しは私達の時間を見守るように差し込む
今なら言ってもいいかな
私のワガママの時間が終わる前に
もう思い残すことないように
「好き」
小さい声だけど
日向の姿を見て、今の気持ちを伝えた
「なんか言った?」
日向はスっと顔を上げてこちらを見た
「ううん、もう十分なんだ」
私はニッコリ笑ってそう伝えた
「体調、あんまよくねぇんだろ」
そう真面目な顔で言ってくれた
私はありがとうと伝え
ノートと教科書、筆記用具を持って座った
「初めて人の押すからさ、怖かったら言ってな」
優しい笑顔で日向はそう言ってくれた
学校にも行けない、外にも出られない
そんな私を連れて日向は暖かい日差しが差し込むデイルームへ連れ出してくれる
「俺が連れ出してやれんのはここまでかあ」
少し悔しそうにそう日向は向かいの席に座る
「ここまででも十分だよ、ありがとう」
日向はコクっと頷く
そして少し前までの日常のように私達はテスト勉強会をした
日向は教えるとスラスラ解いていく
ついこないだまでの風景だったのに懐かしくてたまらない
私は頬杖をついて、そんな日向の姿を見つめていた
「…なにそんな見てんの」
日向は目を勉強しているノートに目を落としたままそうフッと笑った
「勉強してるとき、よく見てたよな」
私はドキッとする
見惚れてたなんて口が裂けても言えなくて
誤魔化す言い訳さえ見つからなくて
ドキドキの胸の音だけが聞こえて
その音だけが日向にも伝わっているかもしれない
「俺はその時間が好きだったりするけどね」
こちらに顔を上げて優しく笑う日向はやはりずるい
もう諦めたはずなのにまた…
「私も好きだよ」
その“好き”に含まれている意味は単純な返答ではないだろう
でも伝わらなくていい
伝わったって困らしてしまうだけだから
もう自分の立場は知っている
「あら、青春でいいわね」
そんな言葉を入院しているおばあさんが声をかけてくる
「ありがとうございます」
私達はそう伝えるしかなくて
少し2人で照れて笑い合った
「俺ら、カップルみたいにみえてんのかな」
そう日向は思わせぶりな言葉を言う
「…そだね」
私は精一杯の返答をした
これ以上バレるわけにもいかない
きっと日向を苦しませてしまう
大丈夫、私は普通だよ
また仮面をかぶったっていい
日向が幸せなら
どこかで聞いた事がある
好きな人は幸せにしてもらうんじゃなくて
幸せにしたい人だって
私は君に幸せになってほしい
だから今だけは許して
最後のワガママだから
今だけは
________誰も日向との時間を邪魔しないで
もう私は満足だから
「さあ続き、やるよ」
その一言で日向はへーいと言いながらまた目線を下に落とした
優しい日差しは私達の時間を見守るように差し込む
今なら言ってもいいかな
私のワガママの時間が終わる前に
もう思い残すことないように
「好き」
小さい声だけど
日向の姿を見て、今の気持ちを伝えた
「なんか言った?」
日向はスっと顔を上げてこちらを見た
「ううん、もう十分なんだ」
私はニッコリ笑ってそう伝えた