「俺は小さい頃に熱と咳で入院した。そんな中、ある女の子と会ったんだ。歳はおなじくらい」

日向は懐かしそうに笑った

「部屋は違かったけど廊下を歩けば、日に照らされた私は眠っていたり、笑っていた。それが妙に大人びて見えた。」

「思わず近くにいた看護師さんにあの子はだあれって聞いたよ、するとお月様なんだよってかえってきてさ」

意味わかんねぇだろと日向はクスッとわらった

「でもそれだけはずっと印象にあった」

日向は目を少し伏せた

「それが私だってよく分かったね」

私は口元に笑みを浮かべて話した

「話は続きがあるんだ。中学の時、サッカーで怪我して入院になったんだ。サッカーに一生懸命になりたい時期に…ほら高校のようにワーワー周りから言われ始めて集中できなかったんだ」

日向はまた私をじっと見た

「怪我で入院してる自分と環境に腹が立って、少し塞ぎ込んでたんだ。思春期だし…ほんとガキだよな」

日向は照れたように笑った

「リハビリ帰り、ふと見たプレイルームに女の子がいた。光に照らされて笑っている彼女の周りには自分より小さい子どもが集まってた」

優しい瞳で私を見つめた

「お姉ちゃん、お姉ちゃん…って子どものわがままに付き合ってた。でも彼女は具合が悪いのか分かんねぇけど部屋に戻る時間になった」

日向は私の頬に触れた

「ごめんねって笑って、看護師さんに連れられて俺の隣を通り過ぎたんだ。俺はビックリした。ほっぺたは痩せていて今にも命が散ってしまうような儚さを感じた」

私の頬をゆっくり撫でた

「俺は重なった、小さい頃に見た女の子に。俺は思わず声をかけたよ、ねぇ君の名前はって」

そして手が離れていく

「彼女は“るな”って一言、後ろ向いたまま答えてさ…そして振り返って“怪我お大事にね”と言って笑った」

日向は下を向いた

「るなって英語で月って意味なんじゃねぇかって退院してから気づいたんだ。そして高校になって、見つけたんだ」

じっと私を見て「君を」とニッコリ笑った

私は見開いた

あの日、確かに検査が入って部屋に戻る時に男の子に話しかけられた

副作用でフラフラだったから顔をしっかり見れたわけじゃない

いや眩しかった、彼の顔が。

だから見れなかった

「ずっと昔から私達は…」

「そう。月を見てさ…あの時の俺はなんでもいいから縋りたかった。だからあぁやって笑えば日が照らしてくれるって思ったらさ…何事も上手くいくようになったよ」

日向は笑う

「だからずっとありがとうって言いたかった。それに…」

日向は照れくさそうに少し言いにくそうだった

「お月様は俺の初恋だったよ」

そうはにかみながら日向は笑った

「嘘でしょ…?」

「ほんとだって!小さい頃から忘れられなくて中学にはしっかり落ちたと思うよ」

私の胸はまたときめく

「でも出会って思ったよ。お月様は俺が照らしてやりたいって…あんな綺麗な笑顔じゃなくて」

日向は私の頬を両手の人差し指でニッコリと上げる

「心の底から笑う彼女を見ることが恩返し…かなって」

あぁ俺はキザじゃね?恥ずかし。と日向は少し顔を赤くして慌てて手を戻した

「そう思ったらさ…憧れてたんだなって。入院しても強く生きる月の姿にさ」

日向は頬杖を窓際につきながら優しく笑う

日向の奥の空は雲が少しずつ流れて、青空が見えはじめた