もうすぐ冬休みがあけるというか明日に迫っている

でも死期が近い私に退院の目処は立たない

学校に来ない私を心配してくれるだろうか
そんなことさえ考えていた時だった

カラカラと扉が開く

母親が静かに入ってきた

「○○、調子はどう?」

「病院にいかなかった時よりまっしだね」

私は皮肉にもそう言いながら笑った

「本当にばかね。風邪ひいた時、無理にでも病院に行かせなかった私もばかだね」

そう母はフッと笑った
久しぶりにそんな姿を見た

「今更、言ったって遅いね」

私が静かにそう返すと少しの沈黙が続いた

「そうね。でもね毎日、楽しそうに学校へ行く○○を見て現実見ろなんて言えなかった」

母親はぽつりぽつり話し出す

「ずっと学校へまともに行けなかった○○が普通に学校に行ってる姿を見て、私は嬉しかった。○○がどう思ってたのかは知らないわよ?」

母親はおちゃめに笑いかけてくれる

「普通って幸せなことなんだなあって実感させられた。いつどんな状況になるのか分からない娘を学校へ行かせるのにすごく決心が必要なだったんだから」

私は初めて知る
母親に生きてほしいっていう思いを

「閉じ込めて生きてくれるならそれでもいいとさえ思ってた。けどねお父さんが学校の話をする○○の顔、本当にイキイキしててって話すもんだから…もういいやって吹っ切れちゃった」

笑顔で話す母親は懐かしむように続ける

「悩んでこういう結果になったこと、後悔してないって言えば嘘になるよ。でもね、○○が普通に生きて、行ってきますっていう言葉を発したあの顔、見られて良かったと思う」

私の頭を優しく撫でてくれる

「毎日帰ってくるかヒヤヒヤしてた。だから毎日、ただいまって帰ってきてくれてありがとう」

でもそんな親心を知らずに反抗するんだからと ふくれた母親は可愛く見えた

「私ね、学校行けて人生で1番嬉しかったよ。ありがとう行かせてくれて」

そんな言葉を返すことしかできなかった

子どもにどんなカタチでもいいから生きてほしいと思うのが親なんだって

そう思えば思うほど死んでもいいって思えた私は何も言えなくて

「ごめんね、何も言えなくて…でも本当にその気持ちは嬉しいと思ってるよ」

どんな言葉を並べたって言い訳にしか聞こえない

どうすればこの優しくて暖かくなるこの気持ちは伝わるのだろう

どんな顔でどんな言葉でどんな触れ方すればいいのか分からない

私が迷っていると母親は優しい声で答えを教えてくれる

「ねぇ、月

________大好きだよ」

母親は暖かい涙を流しながら笑った

本当に綺麗だと思った

その涙には私を想ってくれた色んな感情が込められていて

本当に暖かかった

こうすればよかったんだ
素直な気持ちを言葉にしてこなかった私は分からなかった

ただ言葉にのせれば、どんな短い言葉だって伝わる

________「私もだよ、お母さん」