両親は昔、とても優しくて笑って私のことをなんでも許していたと祖母から聞いた

確かに私を挟んで手を繋いで、大きなお花畑に行ったという夢ではないかも疑うほどの記憶が朧気にある

けれど私が入退院を繰り返す度に両親から笑顔は消えていく

妙な貼り付けたような笑顔は鮮明に思い出せる

そして2人は気づけば笑わなくなった

いつも怒ったような顔をして私を生かそうとする

出来るだけ安静に。

身体が負担ないように。

まるで私は水槽にいれられた金魚のように狭く小さい世界で泳いでいた

上から餌を撒かれて、ただ泳ぐ

その世界からはみ出さないように鑑賞用のように笑って望まれるように生きてきた

でも私は水槽に差し込む陽の光に憧れた
大きな池で泳ごうとして飛び出した

けれど結局この水槽に戻ってきた

そう思っていた

祖母の話を聞くまでは。

あの日、祖母は両親の本音を聞いた

________________「ずっと○○ちゃんの関わり方が分からなかった」

そう聞いた時は目を見開いた
ウトウトしていたはずなのにこの言葉だけは忘れられない

病魔は私の簡単に命が奪う

本人にとっては到底受け入れられるものではないと普通考える

そんな本人の前で泣くわけにはいかない

両親だって普通の人なのだから、特別なんかじゃない

ただ大切な娘が少し旅立つのが普通より早いのかもしれない

その事実だけが受け止めようとすればするほど壊れ物を扱うような接し方になっていく

明日生きてないかもしれない一人娘にどんな顔を向ければいいのだろうか

今日死ぬかもしれない女の子にどんな言葉かければいいのだろうか

眠ってしまえばもう起きないかもしれない我が子にどんな触れ方すればいいのだろうか

そう考えれば考えるほど笑顔だってなくなってしまう

だから水槽にいれるしかなかった
金魚の眺め方が分からなくなった主人は金魚が傷つけば傷つくほど見ようとしない

そう聞いた今ではあの頃のように自由がなんて言えない

でももうどうでもいいのだ

今更聞いたって事実は変わりやしない

他人同士が愛情もらって育てられて、何かの拍子に出会って、愛し合った

そのまま最期まで生きて生きて生きて

尽きていく。

散っていく。

そんな普通(人生)に私が運ばれてきただけ

両親にとって私も所詮モブでしかないの

だってそうでしょ

_______普通に生きられないんだから

私は妙に冷めているのかもしれない
卑屈になってるのかもしれない

でももういいの

最初からどうでもよかった

どうせ死ぬのだから