私のこの1年は幸せだったのかな

毎日髪型をセットして、いつの間にか上手になったメイクをする

そして制服に身に纏って少しスカートを織り込む

鏡に映る私はどこから見ても普通の女の子
魔法がかかったかのようにキラキラして見える

だから家に帰ってお風呂上がった姿は魔法が解けて嫌だった

“明日からまたずっとこの姿になるかもしれない”

そんな恐怖心を毎日抱いて眠って…

また魔法がかかるの

そんな毎日を送るだけで幸せだったはずなのに。

魔法は私をずっと憧れた“恋愛”の主人公にしてくれる

そう私の描いたものはどこかで私をワガママにして、気づいた時には全て手に入れようとした

私は紬みたいなそんな人間になりたかった

いつからかな。あぁあの日。

ずっと紬が眩しくて…

私の手の甲に雫が1粒

「雨漏りしてるのかな…」

外はいい天気で太陽は暖かく人を照らす

どうにも私は晴れた気持ちになれない

「…十分生きたよ」

私の独り言は部屋に響く

「学校にも行けたし…」

布団を握りしめる

「恋愛だってした…」

また雫が1粒

「もう…思い残すことないや」

私は今、笑っていると思う

「死んでもいい…な」

私は空っぽだ

ずっと昔から空っぽ

私が笑えば、みんなが笑う
オシャレしようとすれば、生きようとしてる私を支えてくれる

そんな毎日に満たされたって勘違いして。

本当は何も無いのに。

ガラガラと扉が開いた

慌てて父と母は入ってくる

そして私を思いっきり抱きしめた

「バカ娘」と父親は震える声で怒る

「そんな冷たい人間だと思わなかったわ」と母親は抱きしめる力が強くなる

「何を言っているの」

私の呆然する姿に抱きしめながら母親は言う

「○○こそ、何言ってんの!死んでもいいなんて言わないで…よ」と母親は泣き出した

「両親より先に逝こうとする親不孝な娘に育てた覚えはないぞ」と父親は抱きしめることをやめて後ろを向いた

「もう…迷惑はかけずにすむんだよ?もう私は寿命なんだよ?もう…もう…」

私は言葉に詰まる

「ずっと生きてて欲しいの。娘なんだよ、大好きな大切な娘。幸せに生きてほしいの」とヒステリックに母親は私の肩を揺さぶる

「私…もう十分生かせてもらったよ。ありがとう。もういいの」

ボロボロな母親の手を初めて見た

初めてというか見えないフリをした

父親は振り向かない

ねぇお父さん。
こんなにも背中は小さかったの?

私をおぶってくれた背中は大きくて…

母親はより一層泣き出して、父親は肩を震わせる

「親不孝の娘でごめんね。私はもう十分なの。こんなにもずっと苦しい思いさせてごめんね」

私は言葉が上手くでてこない

その代わり私は笑う

だから笑って?

それだけで満たされた(生きた証)って錯覚できるから

こんなにも感情むき出しの両親を初めて見る

愛されて…いたんだな

やっぱり私はこの1年は確かに幸せだったんだよ