余命宣告というものは昔からよく聞いた言葉だった

その言葉は皆、ドラマでしか聞いたことないよとか言うんだろう

でも私はずっと身近にあった

これは私の昔の話

「私はねぇ〜お月様なんだ!」

「そうだね、月ちゃんの名前はお月様で綺麗だね」

「夜になればいっちばん!輝いてる!」

「お日様と一緒だね」

そんな会話を小さい時、看護師さんと話している私は物心ついた時から死と隣り合わせだった

しっかり病名を聞いたわけじゃない

でもドラマや小説に出てくるような有名なあの病気

病気のおかげで疲労にも弱くて、疲れるとすぐどこかしら痛くて、精神的にも弱くなる

こんな生活、望んだわけじゃない

生きていくにはこの生活が必要だった

私の病魔は厄介でいつだって治癒したと見せかけて再発と悪化がセット

ろくに学校なんて行けた試しなんてない

ずっと私は病室のベットとなかよしこよし

そんな私を見かねて看護師さんは年相応に漫画やアニメ、ドラマを勧めてくれた

そのへんの子どもと変わらないように接してくれる

院内学級だって行かせてくれた

そんな私が初めて心が浮かれたもの
それが『恋愛物語』だった

そんなこの世界に溢れかえった恋愛話、作り物も本当の話も全て私の人生を変えるには容易いもので

今の私がこうなった原因なのかもしれない

普通の学生の男女が出会って恋をする

こんなありきたりなどこでもあるような話が私にはおとぎ話のように感じた

学校に行くことが目標の私にとって

恋愛はその次で、憧れそのもの

いつか出会える運命の人のため、少しでも女の子らしく見た目を整える

抜ける髪の毛のショックを減らすため伸ばさないようにして

病衣だって親に頼んで可愛いものにして

痩せこけた顔色の悪い顔だってメイク道具を母親に借りて、看護師さんに教えて貰いながら顔色を明るくしてメイクを練習した

可愛くいようとすればするほど病室に居ることに慣れてる自分に腹が立って

抜ける髪の毛が目立って見えて

制服じゃなくて病衣を着てるのが嫌になって

メイクが上手くなるほど、ありのままの自分が醜く見える

私は少しでもこのことを受け止めると壊れてしまいそうだった

だから笑った

笑えば周りも笑ってくれる

そうすれば周りの同級生と変わらない普通の毎日のように錯覚できる気がした

気づけば笑うことが癖になっていた

素直になること、現実を見ることを忘れてしまって。

作り上げた私でいることが1番平和だと思った

だから今更、何が私の本心で作り上げた仮面なのか、台本なのか分からない

そんな私は中学生まで入退院を繰り返していた

医者に最後に言われた言葉は「次、再発すればもういよいよです」と。

高校生になるのにあたって、最高の医療を受けられるようにと引越し

心機一転、高校生と過ごせることが何より嬉しかった

普通に生きることが許された1年が今だった