鏡に映る姿はショートカットで制服を身に纏う姿なのは私、○○だ。
高校生活がスタートした春頃からもう梅雨になりそうな時期を過ごす女の子。

ずっと前から伸ばすこともやめてしまった私の髪は梅雨のせいで湿気でアホ毛が立ってしまうため直していると

「○○!おはよ」と声がする

この子は友人の紺月 紬(こんづき つむぎ)
少し抜けてることがあって放っておけない可愛い女の子

「おはよう。紬」

私達は他愛もない会話を続けているとどこからか聞こえてくる黄色い歓声
高校生活が始まったばかりの私でも分かる歓声の先の人間

清川 日向 (きよかわ ひなた)

黒髪短髪の甘いルックスで高身長、その上、この高校にはサッカーの推薦入学であることから運動神経抜群であることも安易に推測できる。

「おはよう」

おまけに歓声を上げる女の子達に笑顔で挨拶を返すなど優しさを持ち合わせ、なにもかも完璧に見える人間いわゆるパーフェクトヒューマンであるのに飾らない性格をしている

「はあ。清川だっけ?あんな完璧人間の欠点なんてあるのかしら」

私はわざとため息をついた

「○○だって清川くんに負けてないよ〜」とニコニコしながら紬はそう言う

私はスタイル抜群そこそこの美人で頭もよく運動神経抜群だとよく言われるのだ

「もう紬は本当に私に甘いなあ!そんなことないよ」と謙遜した

わざとため息つくのもこんな白々しい態度をとるのは恋愛ものの主人公ならするものでしょ?

だって私は主人公なのだから。

___教室についても黄色い歓声は止まない
だって私の隣にいるのが清川日向なのだから

それしても彼はずっと笑顔を絶やさないがストレスではないのだろうか

廊下では名前も知らないおじさんの先生が「教室に戻れーーー」と黄色い歓声達に怒鳴っている

数分して通常の教室風景にもどったのだ
それを見かねて清川日向は一限に使う教科書をドンと立てておき顔を机に伏せた

まるで自分の存在を教科書で隠すように

入学してからずっと彼はそのルーティンを続けている。休み時間の黄色い歓声が止む度、体育以外の授業時間そう伏せてから終わるまで顔を上げないのだ
授業担当の教師や担任は4月の間は注意していたが今はもう諦めている

不思議で仕方なかったが私はずっと見て見ぬふりをしていた
主人公ならばここは声をかけていたなと先日読んだ恋愛漫画を思い出す

「あのさ、清川くん。お疲れのところ悪いんだけど、授業受けなくて大丈夫なの?」

「…」返信はかえってこない

いつもの清川日向なら笑顔ですぐに応えてくるだろう

「君も表向きの俺と話したい?」数分して清川日向からでてる声だとは思えないぐらいの低い声で返答がきた

意味のわからない授業をしている男の教師の声は全てシャットダウンするぐらい驚いた

「君はそういうキャラには見えなかったんだけど」

清川日向は伏せた体勢のまま顔をこちらに向けていた
整った顔立ちに笑みはない。ただまっすぐ私を見ている

「え、いや…ストレスは凄そうだなといつも思ってはいたけど…あのほら…もうすぐ中間テストじゃん?だから隣の席の責務というか…一応声かけしておこうかなと」

予想外の返答で私はしどろもどろになっていた

「へぇー君そんな優しさ持ち合わせてるんだ…俺と同じ匂いしたけど?」

同じ匂い?なにそれ、意味わかんないことばかり言うじゃんこいつ

そんな言葉をムッと抑えた

「はぁ…私と清川くんが一緒?やめてくれない?そのへんの女子に睨まれるじゃないの」

するとクククッと笑いを堪えている声が聞こえた

「思った通りの面白ぇ女だな」

そういうとチャイムが鳴り、清川日向は立てている教科書を閉じ、いつも通りの笑顔を浮かべた。浮かべたというより“貼り付けた”ようにみえた

それ以降は話すこともなく、清川日向は伏せて、笑顔を浮かべての繰り返しをし放課後になった

「なあ今日からテスト1週間前なんだよな」
唐突に私に話す清川日向

「え、まあそうだけど」

私は怪訝そうな顔をしていたと思う
清川日向はそんな顔をフルシカトして「君さ、勉強できそうだしちょっと手伝ってくれよ」とお得意のスマイルを浮かべた