日向との関係は完全に終わった
っていうか私が避け続けている

「私、何がしたかったんだろう」

そうポツリ呟けば静かな自室に響いてしまう

あんな雨の日に駆け出した私の体力は底をついて、体の弱さのおかげて簡単に体調を崩していた

そして今、私の目の前に広がっているのは日向に教えて渡すはずのノート

体調を崩していようが勝手にやってくるテスト

休むわけにもいかなくて勉強する為に、机と向かい合わせ

高校生になってからはじめて最悪のテスト期間だった
日向の中に爪痕を残すためのノートが私の呪いのように降りかかる

私はこれを見る度、日向の陽に照らされた笑顔や傷ついた顔が全て鮮明に思い浮かぶ

そのままノートを捨ててしまっても良かったのに触れるとダメだって日向の声が聞こえる気がする

「日向はどこまで苦しめるの…?」

私は頭をぐしゃぐしゃと抱えた

すると窓の方からミャウと猫の鳴き声がする
窓を見るとあの時の黒猫がいる

開ければ冬の冷たい風が私の頬を掠める
今日は新月で月は見えない

猫は大人しく座ってじっとこちらを見ている
私の指を引っ掻いた猫とは思えない

「ねぇ、猫ちゃん。私はどうしたらいいのかな」

気づけば私は口を開いていた
月が隠れている今日なら素直になれる気がした

「何をしても成功しない」

猫は大人しくずっと座っている
私は同時に頭を伏せた

「主人公になりたかっただけなのにどうして」

今日もまた私のところだけ雨模様
予報ハズレ。

傘をさす人間は誰もいない

「いつから…間違えていたのかな」

ミャウっと返事をするように猫の鳴き声がすると同時に顔をあげる

猫の体は夜の闇に溶け込んで、瞳だけは月のように光を帯びている

まるで夜空にはない月が浮かぶように輝いて見えた

「君は誰かに光を貰って輝いてるの?」

きっと違う、これはこの猫が持っている光

私は眩しくて目を閉じた

いつからこんなに眩しく見えるの?
日向だってそう眩しくてしょうがなかった

だから目を閉じたの

見たくないものを見ないように
現実から逃げるように

いつからか閉じていた

自分の中でいいように組みかえて見たい未来を思い描いて勝手に傷ついた

きっと今の私は誰かに光を貰ってもその光が眩しくて自分で雲を掛けてしまう

輝く月にさえなれない

_______「私はいつだって光を持つ太陽になりたかった」

それが私の思い描く主人公

黒猫はいつしか鳴くのをやめて、夜の中に綺麗に溶け込んでしまっていた

この日は自己嫌悪に陥るばかりで寝付きも悪かった

そのおかげで目覚めはどことなくスッキリしなかった