電話に出て少し他愛もない話をした後、日向は話し出した

「本当は話したくねぇーけど、月が言ったんだからな、後悔するなよ」

真剣な声で日向は前置きした

「今日、紬と夕食を食べに行く予定だった。月からプリント持って来て欲しいって言われた。後で迎えに行くから、先家帰ってって言ったんだよ」

私は驚いた
私のせいで喧嘩したのだ

「行くなって柄にもなく止めてくるから理由聞いても答えねぇし、何求めてんのか分かんなくて、ついイラッとしてさ」

困惑している日向が目に浮かんだ
私は少し嬉しかった

少なからず、私を選んだということだから

「じゃあ紬も来るか?って言ったんだよ。それでも首を横に振るから。これ以上そこに居ても、紬を責める気がしたからさ、もういいわ、理由言えねぇんなら月んとこ行くわって言って来ちまった」

「へー。それ嫉妬したんじゃない?」

私は唸る日向にそう一言、言い放った

「し、、っと?」

日向は少し声が上ずった

「うん、紬は元々私と日向が仲良いの知ってたからね。きっと嫉妬したんだよ」

私は続ける

「日向、嫉妬させたことないの?」

私はニヤッとした

「相手が傷つくことしたくないから…初めてかも…やべぇ。嬉しい」

顔を赤らめた日向が想像した
少しイライラしながらも言う

「こういうのもありなんじゃない?嫉妬させるの」

私はもう自分のために一生懸命だった
誰かのために一生懸命になる主人公なんてまっぴらごめんよ

「日向、たまには私を優先させてみてよ」

と続けた

きっと今の私は想像以上に悪い顔をしている

日向は戸惑いながらも承諾した
人のことがよく分かる日向がこうも1人の彼女に頭を悩ませ、いい方向に行くはずがない甘い誘惑に二つ返事をする

こんなことしてはいけないとどこかで警鐘を鳴らしている
そんなのものを聞かぬフリをして目を閉じた

そんな私は日向とどんな事をするのか作戦を立てる会話をしながら楽しんでいた

本当は聞くべきで見るべきだった
理想の主人公像は脆く崩れる警鐘だったのだから