彼女たちの言う通り、とても可愛らしい顔立ちをしている小田切くんは、入学当初は、まだ彼の中身を知らなかった女子にすんごくモテたのだという。
そしてその中の一人が小田切くんとのデートにこぎつけた。
このあたりじゃ、デートっていったら坂川あたりをブラブラするのが定番で、もちろん彼女もそのつもりだった。

が、しかし。
彼女は何の予告もなく、山の中の地味〜なダムに連れて行かれたのだという。
もったりと澱んだダム(※個人の感想)を眺めながらコンビニのおにぎりをつまみ、たんぽぽの綿毛やつくし、石ころにばっか夢中の彼をまるでお母さんのように後ろからそっと見守って、いっぱい歩いて帰ってきただけ。
オシャレしてった彼女の足はしこたま靴擦れした。

小田切くんは次のデートにも彼女を同じダムに誘ったのだけれど、「きみのおでかけに私はいらないよね」ってフられちゃったらしい。

この噂が流れてから、小田切くんはぴたりとモテなくなった。