「あーあ。またやってるよ、小田切くん」

私の前を歩く女の子二人組が廊下の窓から見下ろすのは、2年1組の小田切要(おだぎりかなめ)くんだ。

校庭にあるすんごい大きなドングリの木の下にしゃがみこみ、一心不乱に地面に目を光らせている男の子。
時折、青空にひとつぶ、眩しそうにドングリをかざしたりしながら彼は黙々とドングリを拾い続ける。

高校生男子が一体何のために・・?

初めてアレを見た人は「ああ、きっと科学部の人ね。何の研究をしてるんだろう」って思うらしい。
ちなみに科学部では、物理・化学・生物・地学・数学を趣味とする人たちが、凡人には理解不能な様々な分野の研究を行っているという。

だけど小田切くんの場合はそうじゃない。彼はただ、たのしく遊んでいるだけなのだ。
ちなみに彼は1年の時からずーっと帰宅部である。

「かわいらしい顔、してるのにねえ」
「アレじゃあねえ」
彼女たちが声を揃えてつぶやく。
「「残念だねえ」」って。

1組の『変な子』小田切くん。
彼はモテない。
中身が小学生のまんまだからだ。