遂に待ちに待った土曜日がやってきた。

「お待たせしました〜」

夕方五時にーー、学生マンション前で待ち合わせをしていると、「遂に!!」と凛は胸を踊らせて、凪と合流をした。
今日の凪は自分の好きなバンドTシャツに黒パンツといういつも通りの格好だが、それが仕事好きな彼らしくて良い。「じゃあ、行こっか」という凪の優しい号令で二人は歩き出す。
デートが始まった途端、前髪大丈夫かな……とか、今日の服どう彼に写っているのかなとか色々、頭の中で考えてしまう。
 
今日はとても朝早くに起きて、珍しくトーストとサラダにヨーグルトというオシャレな朝食を摂った後、ずっとデートに着ていく服を自分の体に合わせながら、鏡とにらめっこしていた。ちなみに今日のデートに着ていく服は水色の花柄のワンピースを選んだ。夏だし、爽やかな感じでいこう。
髪の毛もいつもは下ろしているか、ポニーテールだったので、今日は頑張って三つ編みを自分で結んでいた。手先が不器用なので何回も失敗した。
 
今日は私が先輩と一緒に行ってみたいカフェがあったので、そこに行くことにした。凛の家の近くにあるカフェに着いて、店内に入ると木を基調とした内装が私たちを出迎えてくれた。そこはカメラが趣味のご夫婦が営んでいるお店で、壁には六月の夏を彷彿とさせる写真が沢山、額縁に入れて飾られていた。夕方ということもあって、客はまばらに座っていた。入口近くのテーブル席が空いていたので、そこに座ると「すごく雰囲気が良いねと」と楽しそうに先輩は店内を見回していた。
 
きっとここの店主であろう男性がメニュー表を持ってきてくれた。だが、申し訳なさそうに「今日はもうケーキが品切れでして、ご了承ください」と伝えてくれる。
ケーキ目当てで来たので少し悲しくはあったが、どうやらパフェはあるようなので、コーヒーと一緒に頼むことにした。

「また今度来ようね」
「はい!絶対ケーキ食べましょ!」
 
ケーキはまた再挑戦をしようと二人で強く約束する。

「あの、先輩のこと凪さんってお呼びしても良いですか?」

凛は勇気を振り絞って、聞いた。

「むしろ、凪くんって呼んで欲しい!」
「分かりました。緊張しますけど、頑張ってみます」
「俺も凛ちゃんじゃなくて、凛って呼びたいんだけど良い?」
「はい。良いですよ」

快く快諾する凛。凪は嬉しそうに小さくガッツポーズをする。

「俺のパフェ、一口どーぞ!」
「あ!ありがとうございます!な、凪くんも一口いかがですか?」
「良いのー?ありがとう」

コーヒーとパフェが来ると、まず最初に自分のスプーンでお互いのパフェを一口貰った。凛は黒蜜きなこパフェで、凪はアフォガードパフェだ。二人はとろけるように美味しさを感じていた。コーヒーも一口飲む。これもまた美味しくてコーヒー好きの二人にとって、このお店はリピート確定だ。絶対にまた来よう。
凪と一緒にいる瞬間はどこまでも凛にとってかけがえのないひとときだった。