S市の大通り公園には綺麗な紫陽花が咲き誇っていた。紫と青の色を持つ花が公園を散歩している人たちに癒しを与えている。
パシャリと近くでカメラのシャッター音が聞こえてきた。
「良いですよ〜凛ちゃん可愛い!!」七海がスマホのカメラで写真家さながらのテンションで凛の姿を撮っている。
「何、そのキャラ」凛は思わずふふふと笑ってしまう。七海はこちらに向かって、右手でグットサインを作った。
今は自己プロデュースの授業で二人はお互いのスナップ写真を撮り合っていた。
もう季節は六月中旬なので、暑さが増してきている。少し休もうかと二人は公園のベンチに座った。
「白いワンピースめっちゃ似合うね。可愛い」
「ありがとう。七海のセットアップも似合ってる。好き」
「ちょっとかっこいい系で来ました〜」と七海はわざとらしくジャケットを広げ笑った。
昨日は中々寝れなかったな。正直、今でもドキドキしている。
凛は恋をしたことがないと言えば嘘になる。
お付き合いをしたことはあるが元々他人への警戒心が強い性格なので、どの人とも上手くいかずお別れすることが多かった。付き合うと余計に気を使ってしまって疲れていたのだ。そんな生きるのが難しい性格のせいでよく話し、遊べる友達も七海一人だけ。今では高校の同級生とも連絡を取らなくなった。
「それにしても暑くなったよねー」
「ね、今日の朝、日焼け止めすごい塗ってきた」
それでも何の支障も出ないが、七海の他に関わり合うことができる人に出会えて、嬉しい。凛はとても舞い上がっていた。
「おーい、二人ともサボり?」
「響、あんたこそ何でボッチなの?相方は?」
「トイレ行ってる。それで二人の姿が見えたから来てみた」
「相方、置いて行ってるじゃん……」
それから少しの間、俳優専攻同期の坂本響と三人で談笑をしていた。彼は映像を撮るのが好きらしく、将来はドラマや映画などに俳優として出演することはもちろん、自分で監督をして映画も撮ることが夢なんだと、入学時の自己紹介で熱く語っていた。
中性的な見た目で顔も整っているので、響も高原先生のお気に入りだった。
「響は事務所とか決まってるの?」
何となく会話の流れで聞いてみた。
「いや?まだ、決まってなーい」
「意外だね?響なら色々な所に声掛けられそうだけど」
「響、欲張りだから決められないんだよ。あれもやりたい。これもやりたいって」
「別に良いだろ?そっちの方が人生楽しいし」
七海は才能を持ち合わせながらも、コツコツ頑張る性格だが、響はどこか七海とは違った種類の天才だった。いや、彼に関しては奇才と言うべきだろうか。
どこか他人とは違う道を走り続けている。
中性的な見た目で女子に好かれることが多く、告白を沢山されて好きな子とは付き合っていたが、どの子も彼の異常に変わった性格に付いて行けず、振られてしまうことが多い。
でも、彼は自分のどこが変わっているかが分からないので、振られる度に毎回、「何か嫌なことしちゃったかな……」と学生サロンで友達に相談をしているのをよく見かける。まぁ、物凄く変わってはいるが気遣いができる良い奴ではある。
「あ、凛ちゃん」と声を掛けられ、三人は振り返った。
「先輩、お疲れ様です!!」
凪は後輩三人に軽く会釈をしながら、「お疲れ様」と言った。
「今、授業中?」
「そうなんです。スナップ写真撮ってて」
「へーそうなんだ。ワンピース似合ってるね」
「あ、ありがとうございます」
幸せそうに笑う凛を見て、七海は安堵するようにゆっくりと微笑んだ。響は面食らったような顔で凛と凪を交互に見ていた。
「そろそろ、俺行くね」
「はい!授業頑張ってください!!」
「ありがとう。じゃあ、みんなも頑張ってね」
凪はニコニコと手を振り、学校方面へ歩き出す。
「え、どういう関係?」
響はとても困惑していた。
「まぁまぁ、そういうことよね」
「付き合ってはないけどね」
「でも、それもあともう少しでしょ?今週デート行くんだもんねー?」
「ううう……」
実は今日の朝、嬉しすぎて七海にラインで報告をしていた。
「頑張れ頑張れ〜凛なら大丈夫。自分に自信を持って」
「……」
響は何だか浮かない顔をして、キャンパスに入っていく凪を見つめていた。
そんな彼のことは露知らずに凛と七海は盛り上がっていた。
パシャリと近くでカメラのシャッター音が聞こえてきた。
「良いですよ〜凛ちゃん可愛い!!」七海がスマホのカメラで写真家さながらのテンションで凛の姿を撮っている。
「何、そのキャラ」凛は思わずふふふと笑ってしまう。七海はこちらに向かって、右手でグットサインを作った。
今は自己プロデュースの授業で二人はお互いのスナップ写真を撮り合っていた。
もう季節は六月中旬なので、暑さが増してきている。少し休もうかと二人は公園のベンチに座った。
「白いワンピースめっちゃ似合うね。可愛い」
「ありがとう。七海のセットアップも似合ってる。好き」
「ちょっとかっこいい系で来ました〜」と七海はわざとらしくジャケットを広げ笑った。
昨日は中々寝れなかったな。正直、今でもドキドキしている。
凛は恋をしたことがないと言えば嘘になる。
お付き合いをしたことはあるが元々他人への警戒心が強い性格なので、どの人とも上手くいかずお別れすることが多かった。付き合うと余計に気を使ってしまって疲れていたのだ。そんな生きるのが難しい性格のせいでよく話し、遊べる友達も七海一人だけ。今では高校の同級生とも連絡を取らなくなった。
「それにしても暑くなったよねー」
「ね、今日の朝、日焼け止めすごい塗ってきた」
それでも何の支障も出ないが、七海の他に関わり合うことができる人に出会えて、嬉しい。凛はとても舞い上がっていた。
「おーい、二人ともサボり?」
「響、あんたこそ何でボッチなの?相方は?」
「トイレ行ってる。それで二人の姿が見えたから来てみた」
「相方、置いて行ってるじゃん……」
それから少しの間、俳優専攻同期の坂本響と三人で談笑をしていた。彼は映像を撮るのが好きらしく、将来はドラマや映画などに俳優として出演することはもちろん、自分で監督をして映画も撮ることが夢なんだと、入学時の自己紹介で熱く語っていた。
中性的な見た目で顔も整っているので、響も高原先生のお気に入りだった。
「響は事務所とか決まってるの?」
何となく会話の流れで聞いてみた。
「いや?まだ、決まってなーい」
「意外だね?響なら色々な所に声掛けられそうだけど」
「響、欲張りだから決められないんだよ。あれもやりたい。これもやりたいって」
「別に良いだろ?そっちの方が人生楽しいし」
七海は才能を持ち合わせながらも、コツコツ頑張る性格だが、響はどこか七海とは違った種類の天才だった。いや、彼に関しては奇才と言うべきだろうか。
どこか他人とは違う道を走り続けている。
中性的な見た目で女子に好かれることが多く、告白を沢山されて好きな子とは付き合っていたが、どの子も彼の異常に変わった性格に付いて行けず、振られてしまうことが多い。
でも、彼は自分のどこが変わっているかが分からないので、振られる度に毎回、「何か嫌なことしちゃったかな……」と学生サロンで友達に相談をしているのをよく見かける。まぁ、物凄く変わってはいるが気遣いができる良い奴ではある。
「あ、凛ちゃん」と声を掛けられ、三人は振り返った。
「先輩、お疲れ様です!!」
凪は後輩三人に軽く会釈をしながら、「お疲れ様」と言った。
「今、授業中?」
「そうなんです。スナップ写真撮ってて」
「へーそうなんだ。ワンピース似合ってるね」
「あ、ありがとうございます」
幸せそうに笑う凛を見て、七海は安堵するようにゆっくりと微笑んだ。響は面食らったような顔で凛と凪を交互に見ていた。
「そろそろ、俺行くね」
「はい!授業頑張ってください!!」
「ありがとう。じゃあ、みんなも頑張ってね」
凪はニコニコと手を振り、学校方面へ歩き出す。
「え、どういう関係?」
響はとても困惑していた。
「まぁまぁ、そういうことよね」
「付き合ってはないけどね」
「でも、それもあともう少しでしょ?今週デート行くんだもんねー?」
「ううう……」
実は今日の朝、嬉しすぎて七海にラインで報告をしていた。
「頑張れ頑張れ〜凛なら大丈夫。自分に自信を持って」
「……」
響は何だか浮かない顔をして、キャンパスに入っていく凪を見つめていた。
そんな彼のことは露知らずに凛と七海は盛り上がっていた。