*
学校が終わるといつも通り、凪と一緒にS市の中心地を歩いていた。凛が住んでいる学生マンションは中心地から少しだけ離れた場所にあるからだ。家から学校まで三十分の時間がある。このひとときが何よりも幸せな時間だ。彼と会っていない間にどんなことが起きても、この人の前では笑顔で居られる。そんな凪の存在にいつも助けられていた。
突然、歩いていた彼の足が止まった。
「ねぇ、凛ちゃん。何かあったの?」
「え?何もないですよ?」
「あはは」と笑いながら誤魔化したが、凪は一向に歩こうとしない。これは正直に話さないと進んでくれないやつだなと思い、凛はオーディションのことを話した。
「物凄く悔しくて……最近、ずっと落ち続けてばっかなんですよね」
「そっか……それは悔しいね」
「でも、次もオーデションはあります。なので、また頑張ります!」
大丈夫ですよと伝えるように凛は胸の前で両手の拳を握り「頑張ろう」のポーズをとった。だけど、それだけでは誤魔化しきれなかった。凪は眉を下げて心配をするような表情をしていた。それでも彼は応援の言葉を口にした。
「うん。頑張ってね。俺はいつだって凛ちゃんの味方だよ。応援してる」
「ありがとうございます。先輩のおかげで前を向けます」
「俺は応援しかしてないよ」
「応援も有難いですし、何より私はーー先輩が音楽活動を頑張っている姿が支えなんです」
凪は訳が分からず、口をポカンと開けていた。目はキョトンとしている。
「先輩が頑張ってる姿見ると、元気が貰えるんです。一歩、勇気を出して踏み出してみようって思えるんです」
「ありがとう」
凪は何故かその優しい瞳にほんの少しの涙を湛えていた。
「え、どうしたんですか⁉︎私何か嫌なこと言っちゃいましたか……?」
凛はあたふたと焦ってしまう。本当にどうしたんだろう?
「ありがとう……今の言葉で救われたよ。俺が頑張ってることで、誰かの力になれているんだなって知れたから」
「そんな大層なこと言えてないですよ」
「ううん。ちゃんと救われたよ。でもね、俺は凛ちゃんが頑張ってる姿にも元気を貰えるんだ」
「本当ですか?」凛は少し笑いながらそう答える。私なんかに元気づけられる人なんて居るのかと。
「本当だよ!言っとくけど、凛ちゃんは自分が思っている以上に凄い子なんだからね!」
少しだけ片頬を膨らませ、ムスッとされてしまった。だけど、それが嬉しかった。
スランプに陥ってから、自分のことが好きじゃなった私を彼はそんなことはないと言ってくれる。あまり、他の人には言えない悩みだったからこそ、凛はそれを気づいて支えの言葉を言ってくれる凪が大人で凄いと思った。
学校が終わるといつも通り、凪と一緒にS市の中心地を歩いていた。凛が住んでいる学生マンションは中心地から少しだけ離れた場所にあるからだ。家から学校まで三十分の時間がある。このひとときが何よりも幸せな時間だ。彼と会っていない間にどんなことが起きても、この人の前では笑顔で居られる。そんな凪の存在にいつも助けられていた。
突然、歩いていた彼の足が止まった。
「ねぇ、凛ちゃん。何かあったの?」
「え?何もないですよ?」
「あはは」と笑いながら誤魔化したが、凪は一向に歩こうとしない。これは正直に話さないと進んでくれないやつだなと思い、凛はオーディションのことを話した。
「物凄く悔しくて……最近、ずっと落ち続けてばっかなんですよね」
「そっか……それは悔しいね」
「でも、次もオーデションはあります。なので、また頑張ります!」
大丈夫ですよと伝えるように凛は胸の前で両手の拳を握り「頑張ろう」のポーズをとった。だけど、それだけでは誤魔化しきれなかった。凪は眉を下げて心配をするような表情をしていた。それでも彼は応援の言葉を口にした。
「うん。頑張ってね。俺はいつだって凛ちゃんの味方だよ。応援してる」
「ありがとうございます。先輩のおかげで前を向けます」
「俺は応援しかしてないよ」
「応援も有難いですし、何より私はーー先輩が音楽活動を頑張っている姿が支えなんです」
凪は訳が分からず、口をポカンと開けていた。目はキョトンとしている。
「先輩が頑張ってる姿見ると、元気が貰えるんです。一歩、勇気を出して踏み出してみようって思えるんです」
「ありがとう」
凪は何故かその優しい瞳にほんの少しの涙を湛えていた。
「え、どうしたんですか⁉︎私何か嫌なこと言っちゃいましたか……?」
凛はあたふたと焦ってしまう。本当にどうしたんだろう?
「ありがとう……今の言葉で救われたよ。俺が頑張ってることで、誰かの力になれているんだなって知れたから」
「そんな大層なこと言えてないですよ」
「ううん。ちゃんと救われたよ。でもね、俺は凛ちゃんが頑張ってる姿にも元気を貰えるんだ」
「本当ですか?」凛は少し笑いながらそう答える。私なんかに元気づけられる人なんて居るのかと。
「本当だよ!言っとくけど、凛ちゃんは自分が思っている以上に凄い子なんだからね!」
少しだけ片頬を膨らませ、ムスッとされてしまった。だけど、それが嬉しかった。
スランプに陥ってから、自分のことが好きじゃなった私を彼はそんなことはないと言ってくれる。あまり、他の人には言えない悩みだったからこそ、凛はそれを気づいて支えの言葉を言ってくれる凪が大人で凄いと思った。