私は震える手でどうにか新聞を開き、活字を目で追いかけた。


必死に読んでいるうちにだんだんと汗が引いていき、やがて手の震えも止まった。


動悸は静まり、気がつけば目の前の活字に入り込んでいた。


昨日アメリカで大きな地震があったらしい。


地元サッカーの試合は3ー0で勝った。


今日の4コマ漫画は新連載だ。


1度読み始めたら済から済まで読まないと気がすまない。


私は背中に壁を付けて座り込み熱心に新聞を読み込んでいく。


「信行!!」


悲痛な叫び声が聞こえてきてハッと我に返って新聞から顔を上げた。


震えは収まっているから大丈夫そうだ。


それでも新聞紙はしっかりと右手に握りしめた状態で、ベッドへと近づいた。


信行の体は本来の半分ほどの大きさになっていて、手足は黒ずみ、まるで炭を塗りたくったようになっていた。


たとえば信行が活字の「ぬ」になったとする。