返事があってひとまず安心した。


振り落とされてしまえば最後だ。


「でも早く元の場所に戻らないと」


信行の言葉に私は目を見開いた。


「どうしたの?」


「ちょっと場所がズレただけだから大丈夫」


どうやら本の中で移動してしまったみたいだ。


それならすぐに戻らないと……そう思った時、少年が部屋に戻ってきた。


私も信行も口をつぐんで黙り込んだ。


声を聞かれるわけにはいかない。


少年は落下してきた本を片付けると、また私達の前に座って活字をおいかけ始めた。


信行はちゃんと元の場所に戻れただろうか?


もうないはずの心臓がどきどきしてきて、緊張感が体を支配する。