「こちら2冊ですね。返却は一週間後です」


そんな!


まさか貸し出されるとは思っていなくて全身から冷や汗が吹き出す。


一週間も図書館を離れてしまうことに恐怖心があったが、抗うことはできない。


ここで焦って表に出てしまえば、表紙に書かれているタイトルなどに私が出現することになりただの誤字ではなく元々人間だった誤字だとバレてしまう。


バレてもほっといてくれる人はいるらしいが、たいていの場合邪魔扱いされ、本から引き剥がされて完全な本の虫になってしまうのだ。


そうなるともう本の中にもっどる頃はできなくなる。


自分が人間だったことも、活字だったときの記憶もなくして虫として生きていくことになるのだ。


それだけは避けたい。


そのためには完全な誤字になりきって、すべてが過ぎ去るまで待つしかないのだった。