信行が言っていたように外には図書館司書の人もいるし、時々借りていくお客さんもいる。


けれど図書館への風当たりは日に日に強くなっているようで、ここへ来た当初よりも利用者の数はかなり激減していた。


当初から自分たちがいる本を借りて行く人がいなかったこともあり、私はいつもどおり児童書の2巻の中にいた。


好きなシーンを繰り返し体験して、満足すれば他の本に移動するのがここでの生活のすべてだった。


だから外から私のいる本に力が加わった時、驚いて隣の活字にしがみついた。


印字されているわけではない私は本全体が動くと振り落とされてしまうかもしれないのだ。


驚いて頭が真っ白になり、ひたすら揺れに耐えていることしかできなかった。


やがて私のいる本はカウンターへ運ばれたようで、何度か聞いたことのある図書館司書の声が聞こえてきた。