それから信行は最近の図書館について教えてくれた。


この活字化の病気が出始めてからはほとんどの図書館が閉園してしまった。


この図書館もいつ閉まるかわからない状態らしい。


それでも影で紙の本を探す人はまだまだ多いらしく、利用者さんは後をたたないそうだ。


「ただね、表立っての営業はできないからこの図書館はいつでも電気が消されているんだ。表には閉館の紙まではられている」


「そうなの?」


「あぁ。図書館司書の人の話しが聞こえてきたんだから、間違いないよ」


紙の活字がそこまで切羽詰まった状態になっているとは思ってもいなくて、胸が痛む。


「だけど大丈夫さ。僕たちはもう活字になったんだ。今はこの生活を思い切り楽しもう」


信行はそう言うと私の手を握りしめて恋愛小説の中を泳ぎ始めた。


主人公たちの出会いから始まり、デート、そして切ないすれ違い。


けれど最後にはお互いに理解し合えってハッピーエンドだ。


「素敵」


間近で最後まで彼らのことを見ていた私はホッと息を吐き出して呟く。