「あぁ、そうだよ。そっか、蘭も来たんだね」


信行は弾むような声で言った。


私も信じられない思いだった。


何百、何千冊と本が置かれている図書館で本当に信行を見つけ出すことができるなんて思ってもいなかった。


もしかしたら、私達の両親が気を利かせて近くの本棚においてくれたのかもしれない。


「この本はなんなの?」


「これは恋愛小説だよ」


信行は少し照れくさそうな声色になって答えた。


胸がくすぐったくなるようなこの感覚はそういう理由があったみたいだ。


とにかく苦手なホラーではないようで一安心だ。


それから私達は自分たちが見てきた冒険の話をした。


大好きな本の中に入れた感動や、両親を悲しませてしまった罪悪感も、信行が相手ならなんでも話せた。