別の本の中に入ると肌で感じる空気も変わった。


地下室のドアを開けたとき空気の変化を感じるときと同じようなものだ。


隣の本に入った瞬間全身に鳥肌がたち、私は一瞬うろたえた。


この本は一体なんだろうかと確認したとき、それがホラー小説であることがわかった。


その瞬間血の気が引いていくのを感じる。


血なんてとっくの前に通わなくなっているのに、不思議なものだ。


とにかく、私は怖いものが苦手だった。


いくら活字だと言ってもホラー系は遠慮してきた。


それがまさか活字になって入り込んでしまうなんて思ってもいなかった。


活字になるとシーンひとつひとつが目の前で実際に起こっているのと同じなのだ。


すぐに元の本に戻ろうとしたとき、女の声が聞こえてきて動きを止めた。


今の声はなに?


ゆっくりと視線を移動させると、暗い空間の中に白い服を着た女が立っているのが見えて喉が震えた。