だから、本が沢山ある場所が人気になっているのだ。


私は表表紙の前まで移動してきて大きく息を吸い込んだ。


本から本への移動は初めての体験だ。


うまくできなければ本の虫として床に落下してしまう。


そうなればもう活字ではいられなくなり、本当の虫になってしまうのだ。


人間でいたころも様々な試練があったが、活字になってもそれなのりの試練があるというわけだ。


飲まず食わずでただ活字を満喫できると思ったら大間違いだ。


「さぁ、行くよ」


私は自分に言い聞かせるように呟いて、まずは右手を本の表紙から突き出してみた。


ハードカバーの感触が腕にあり、少しだけ痛みを感じた。


だけど私の右手はすぐに隣の拍子に触れて、そしてその中に入り込むことができた。


その感覚に私はエイッと思い切ってジャンプし、見事隣に移ることができたのだ。