次に目を覚ました時、私は本の中にいた。


何度も嗅いだことのある紙の匂いがしてそれがわかった。


自分の体を確認してみるととても小さくて細くて頼りない。


子供の指一本で隠れてしまうほどの大きさだ。


「私、『お』になったんだ」


活字になる人は自分にとって身近な活字になるという。


私が「お」になったのは名字が岡田だからだろう。


ということは、信行は原田の「は」になっているかもしれない。


どこかの本「は」の誤字があるだろうか。


そう思いながら私は活字の世界を泳ぎ始めたのだった。