もう本を持ち上げる力もなくて、私は両親に頼んで本を開いてもらい、目の前にかざしてもらうようになった。


体はこれほど弱っているのに本を読む力だけは存分に残っていて、私は両親に甘えていつまでも活字を読みふけっていた。


そして一週間が近づいてきたとき、自分の体が黒ずんできたことに気がついた。


「私、活字化が随分と進んだみたい」


そう言うと洗濯物の整理をしていた母親が振り返り、泣き出してしまいそうな顔になった。


「お母さん、私も信行と同じ図書館に置いてね」


母親はなにかをこらえるように押し黙ったが、大きく頷いた。


そして、その瞬間は案外早くやってきた。