河川敷はいつしかすっかり暗くなり、ぼんやりと続く提灯の明かりと期待に満ちた群衆の賑わいが、間もなく訪れる夏の終わりをまざまざと感じさせる。

「柚歌」

「うん?」

「浴衣似合ってるよ。今日の柚歌、すげー可愛い」

急に伸びてきた大きな手が金魚をゆらゆらと揺らして、耳元でくすぐったい音がした。

「うん……ありがとう」

私は泰輝の方を見る事が出来ず、カップの中ですっかりピンク色に溶けていたかき氷を一気に飲み干した。

ようやく鳴り響いた破裂音と共に、それに負けない大きな歓声が上がる。
満を持して放たれた金色の輝きは、あっという間に夜空に散った。
それを追いかけるように放出されゆく色とりどりの刹那を、私たちはしばらく黙って見ていた。
不確かな輝きは何故か胸を締め付ける。その美しさはなんだか、恐ろしさにも似ているような気がした。