主宰者は立ち上がり、腕を振り上げて、兵に指示を出す。

大勢の兵が現れて、観客を強引に退かす。

瞬く間に観客席の最前列にずらりと並んだ。

ジュは囲まれた。

兵は弓を引き、矢先をジュに向ける。

主宰者が腕を振り下ろして合図する。

その瞬間、矢が雨のように放たれた。

ジュの掲げる剣が青く輝き始める。

剣つばからぶわっと水が現れる。

その水はまるで生きている竜のように刃へ巻き付き剣先まで包み込んだ。

「まさか、水属性の魔法剣士だと!?」

司会者の困惑した声が拡声器を通って聞こえる。

ジュは水を纏った剣を頭上で円を描くように大きく仰いだ。

水を纏った剣から、水の玉が放射される。

その水の玉は周囲全体に幾つも飛んでいく。

水の玉一つ一つ、飛んでくる矢を取り込み、ジュに届く前に地面へ落下した。

次第に熊の興奮が穏やかになっていく。

噛み付く力も和らぐ。

観客は逃げ惑い、出入り口の争奪戦が始まっていた。

我先に逃げようと、観客同士が殴り合いひしめき合う。

ジュは水を纏った剣を仰ぎ続ける。

水の玉は更に飛んでいき、兵の腕と足元に当たった。

兵は粘り気のある水に身動きが取れなくなった。

「なんだ、あの魔法は、上級魔法でも見たことが無い!」

司会者は言う。