「双子は自殺率が高いんだって」
 そう言ったのは緑目(グリーンアイ)だった。
 小さい子たちは大きな部屋にベッドを並べて寝ていたが、十五歳になると二人で一つの部屋を使うことができた。
 ゲルダもグリーンアイと二人で小さな部屋を使っていた。
 ゲルダの黒い瞳と黒い髪、自分の緑の目と栗色の髪とを比べて「なぜ違うのか」という話をグリーンアイはしていた。
「自分がいなくても、もう一人がいるからいいって思っちゃうみたい。だから、私たちはみんな違う容姿をしてるんだって」
 嘘か本当かは知らないけどね、と言い、「でも、確かに、同じ顔の子ばかりだったら、頭がおかしくなっちゃうかもね」と笑った。
 真っ白なシーツがピンと張られたベッドにグリーンアイが寝転ぶと、栗色の長い髪がぱらりと周囲に広がった。何もない部屋の白い天井を、彼女は黙って見ていた。
 清掃用の自立ロボットは絶えず巡回していて、建物の中はどこもかしこも新品のように清潔で塵一つ落ちていない。
 昼間ゲルダが持ち込んだわずかな土や木の葉の切れ端も、もうどこにもなかった。
 ゲルダは思い切ってグリーンアイに声をかけた。
「ねえ。明日、外に行ってみない?」
 顔だけをゲルダに向けて、彼女は不思議そうに目を瞬いた。
「外って、どこ?」
「森」
 カイが見つけた秘密の場所。二人だけの秘密。
けれど、グリーンアイに教えても、カイはきっと怒らないだろう。