「ていうか、先輩はなんでこんな仕事始めたんすか?」
 顔を覆った指の隙間から、その少し細い目が私を見つめている。
 彼はここに望んできたわけではなかった。なんでも、志望していた企業の面接にすべて失敗し、泣く泣くここで働くことを決めたらしい。

「さあね」
 私は勢いをつけて立ち上がり、飛び降り防止のフェンスに近づいた。
 そこから庭を見下ろすが、冬が近づいているためあまり花は咲いていない。
 
「さあ、じゃなくて。教えてくださいよ。俺みたいに、就活失敗したからっすか?」
 逃げた私を追い詰めるように、篠崎が隣に並ぶ。
 私は「どうでしょうか」と適当に流しながら、顔を背けた。
「別に教えてくれてもいいじゃないっすか」
 食い下がる彼を無視し、私は雲ひとつない青空を見上げた。