「ねえ、ルキ。悪魔って、どんな生き物なの?」
「さあ。キミは、一生知る必要がない奴らだよ」
「むーーっ。気になるっ、教えてよ!」
「あー、わかったわかった! まったく。キミは言い出したら聞かないなぁ」

 また、この夢だ。
 幼いころから、ずっと見つづけている夢。
 一面に広がる真っ白い雲の上で、わたしは、彼と常に一緒にいる。

「書物によると、残虐非道な生き物なんだって。奴らにとってのごちそうは、他の生き物の魂だと言われている」
「ええっ!? 魂を、食べちゃうの?」
「うん。だから、奴らには、決して近づいてはいけないよ。もっとも、出会う可能性もないだろうけどね」

 彼――ルキは、本を読むのが好きな、大人びた男の子。
 吹いてきた風が、彼のやわらかい黄金色の髪を揺らした。

「ルキって、本当に物知りね! わたし、ルキの話を聞くのが大好き」
「ララは、おおげさだよ」
「そんなことないよ? もちろん、ルキ自身のこともだーいすき!」
「っ。……あ、ありがとう?」

 好きっていうと、ルキは白い頬をカーッと赤く染めて、いっつも目をそらしちゃう。
 照れ屋さんなんだよね。
 そんなシャイなところも愛おしいけど、乙女心としてはちょっぴり不満だ。

「ルキは?」
「え?」
「わたしのこと、どう思ってる?」
「え、えーっと……わかってる、よね?」
「今日こそは、ごまかそうとしたってダメなんだから! 言ってくれないと……泣いちゃうよ?」
「ひどい脅し文句だ」
 
 彼は、「はぁ。キミには、かなわないね」とため息をつくと。
 澄んだ蒼い瞳でわたしを見つめながら、はにかんだ。

「……ララ、大好きだよ。たぶん、キミが思っているよりも、ずっと。ボクはね、キミの幸せだけを願ってる」

 ルキに甘やかされると、胸が甘く高鳴って、泣きたいような気持ちになる。
 この世界のことも、彼のことも、頭に靄がかかっているように多くはわからないけれど、これだけは確信できるんだ。
 彼こそが、わたしの、運命の相手なんだって。