終章
初めての水族館はキラキラしていて、宝石みたいだった。いや、宝石だった。たくさんの魚達が自由に泳いでいて、それでいて光に反射して様々な色に輝いていて、瞳に飛び込んできた景色に一瞬でとらわれていた。あれからたくさんの水族館に行っているが、あの場所の、あの感動はまだ一度も感じたことがない。結果として母へのサプライズは大成功だった。驚くほど感動してくれたし、何より俺たちの初めて行った水族館であることを覚えていてくれたことに俺達自身も嬉しかった。
「びっくりしたね!初めて見たときと一緒だよ!」
そう彗が俺に話しかけてきた時、一瞬で、あの頃とらわれた世界に、あの頃に、時間が巻き戻った気がした。もう二度と味わえないと思っていたあのときの感動をもう一度味わえた。昔よりも高くなった視界から見える世界は、確かにすこし違っていたが、昔よりもキラキラと輝きが増していた。あの頃から変わった身長差に、あの頃と変わらないキラキラと輝かせた瞳を向ける彗に俺は
「うん、そうだね。」
と笑い返した。