1
私はまだ幼い弟と妹に掴まれながら館の中へと足を踏み入れる。中は薄暗くて、キラキラと光る容れ物がなければ私でも怖かったことだろう。海と彗は入り口で買ってもらった大きなぬいぐるみを抱えながら、今にも泣き出しそうな顔で私の腕を掴んでいる。
「海くん、彗ちゃん、怖いの?」
そう私が聞くと、小さい体を縮こまらせて
「そんなことないもん!」
と強がる。それとは反対に私の腕を掴む力は一段と強くなる。そんな姿も可愛くて思わず笑ってしまう。暗がりを抜け、広い所に出ると私は思わず目を見張った。
「うわぁ!」
そんな声が両脇から聞こえる。
「すごいすごい!ねぇね、月ちゃん見て!綺麗だねぇ!」
「お空飛んでる!おっきいさかなさん!ねね、あのお魚さんは何ていうの?」
矢継ぎ早に質問される。
「あれはね、ジンベイザメって言うんだよ。」
「かっこいいねぇ!」
さっきまであんなに怖がっていたのに今はもう瞳をキラキラさせている。
「ね、月ちゃん、私も一緒に飛べるかなぁ?」
なんて満面の笑顔で私に言う。体いっぱいでぬいぐるみを抱えて、体いっぱいでワクワクを表現してくれる。
「一緒にお空飛べるかなぁ?海くん!」
「ね!彗ちゃん飛べるかな!」
なんて可愛い会話をしている。部屋中が青色に染まり、彗と海が言うようにまるで空を飛んでいるような感覚に陥る。床と触れているつま先からすこしづつ青色に染まるように、光の加減だろうか、床と天井では青の濃淡が変化する。水面を通して見える世界はキラキラと揺れ、私達の顔を優しく照らす。簡単に言えば綺麗で、もっとこの景色を説明したくても語彙力が足りなくて何も出てこないのがもどかしい。きっとこの一番最初の感動にまさるものは二度と味わえないだろう。
「月ちゃん!また来たいね!」
二人の天使のような満面の笑みを見つめながら、私は大きくうなずいた。