序章
母の誕生日が1週間後にせまった今日、俺と彗は姉の家に招集されていた。
「わかってると思うけど、海、彗、お母さんの誕生日プレゼントはちゃんと用意した?」
俺たちの姉である月ちゃんは去年大学を卒業し、今年から社会人として働いている。
「もちろん!海と二人で考えたんだけどね、」
と彗が話し始める。彗の話が終わると、
「思い出の、ね。うん、私が調べとくね。」
という姉の一言で解散となり、今日くらい泊まっていけば?との誘いに断りを入れ、彗と二人、帰路につく。今年の春、二人で同じ大学に受かったため、家を出て、新しく二人で暮らし始めた。お互いの距離感がわかっている分、暮らしやすい。
二日後、思い出のあの場所がわかったと姉から連絡が入ったため、友人と出かけていたであろう彗を招集し、月ちゃんと落ち合う。雰囲気が海のようなカフェで五日後のプランを3人で練る。福島からはすこし離れたところだった為、一泊二日のプチ旅行が二人へのプレゼントとなった。俺たちは上京してきているため、両親とはなかなか会えていない。だからだろうか。姉が俺たちの分まで旅館を予約してくれるという。
「まさかあの場所が宮城県にあったなんてね!全然知らなかったよ。」
と彗が笑う。
「確か、二人の誕生日にお祝いで初めて行ったんだっけ?」
「うん!そうだよ。ほんとすごかったなぁ。」
本当にそう思う。幼かった俺たちにとって、あの場所は魔法の城だった。