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翌日、いつもと変わらぬ学校……とは違っていた。
しきりに彰から向けられる、なにか言いたげな視線を感じる。
だが、香奈は気付いていながら無視をした。
昨日ちゃんと釘を刺していたおかげだろう。チラチラと見てはいても、彰が香奈に話しかけてくることはなかった。
内緒にしておくように伝えていて本当によかったと心から思った。
今も彰の周りには人が絶えず、輪の中心にいる。
彰と親しくならんと奔走する女の子たちの姿が目に入ってくる。
どの子も自分に自信がある、かわいらしく美人な子ばかりだ。
校則に違反しないギリギリで着飾り、自分の見せ方を分かっている彼女たちは、地味子と揶揄されることもある香奈とは正反対。
もし彼女たちに彰から告白されたことを知られたら……。
断ったら身の程知らずと怒られ、受け入れても身の程知らずと嫉妬されることだろう。
それがゲームだと知っても、未だネタばらしがされていない以上、その不満の矛先はすべて香奈へと向かってくる。
まったくもって厄介事に巻き込まれてしまったものだと、思わず溜息が出てしまう。
別に自分でなくてもいいだろうにと、香奈は人知れず怒りを覚えるが、それに気付く者はいない。
いつもぼっちの香奈のことを気にする者がそもそもいないのだから。
彰もそんな中のひとりと思っていた。
香奈は密かに彰に好感を抱いていたのだが、そんなことは誰も知らないだろう。彰すら。
それはなんてことのない些細なことだった。
日直を押しつけられた時、手を貸してくれたこと。
体育の後の後片付けをひとりでしていたのを手伝ってくれたこと。
香奈を侮って提出物をあえて渡さないようにからかう男の子を、叱って提出物を渡してくれたこと。
それら全部、彰は気にもとめていないのだろうが、香奈は助かったし、その度に好感度が爆上がりしていたのだ。
それがまさかの裏切りのような昨日の告白。
彰だけはそんなお馬鹿で頭の悪いゲームに興じることはないだろうと思っていたのに……。
本当にがっかりである。
別に恋愛として好きだったわけではないが、一気に思いは冷めてしまった。
できれば早くこんな茶番は終わらせたいのだが、いつになったらネタばらしをしてくれるのか見当がつかない。
すると、教室に慌ただしく女の子が入ってきた。