「三島香奈さん、俺と付き合ってください」
そんなことを告げる目の前の青年に香奈は目を見開いた。
人気のない公園に呼び出された時はなにか因縁でもつけられるのかと警戒して望んだというのに、まったくもって予想外だ。
しかも相手は、あの篠宮彰。
篠宮彰といえば、学校では知らぬ者がいないほどの有名人。
親は大きな不動産会社の社長で御曹司。
彼自身も雑誌のモデルをするほど容姿端麗で、女子の熱視線を独り占めするような人だ。
そんな彼に告白されたのだから、驚くなというほうが難しいだろう。
告白された香奈はというと、目立つどころか地味すぎる容姿の上、性格も大人しく人見知りで、友達らしい友達もいないぼっちである。
そんな学校のアイドル的存在の彼から告白されるような人間ではない。
しかし、そのすぐ後には納得した。
近頃、学校では罰ゲームとして、人気のない女子生徒に告白するという遊びが流行っていた。
きっとこの告白もその罰ゲームによるものだろうと考えた。
とんでもなくくだらないお遊びだが、一時の流行りだろうと傍観していた香奈。
まさか自分がその餌食になるとは思いもしなかった。
標的になった女子達は、憤慨したり、一発お見舞いした子もいる。
怒れる子はまだいい。
オッケーを出した直後に罰ゲームだったとからかわれ泣いてショックのあまり学校を休んだ子もいて、本当に気の毒でならない。
そんな馬鹿な男達の中にこの篠宮彰がいたことには少しショックだった。
見ている限りでは、彰はとても好青年のように見えていたから。