ホテル入口でさっさと部屋番号ボタンを押して、彼の手を強く引っ張りながらずんずん前へ進む。

最初が足取りが重かった彼だけど、あたしと同様に移動手段がないことに気がついたのか、
彼の手を引くあたしの手の抵抗感は徐々に減って行く。


どこの誰かも知らない
しかもズブ濡れ

変態男かもしれない
強盗犯かもしれない
オタク男かもしれない
性癖ヤバイ男かもしれない

それでも、この時のあたしはそんなことに怯むことがなかった。

ズブ濡れの彼をどうにかしてあげたい一心で。