こんな今があるのも


あの夜があったから

そして

あたしも
ズブ濡れサイテー青二才じゃなくなったサイコー眉目秀麗産科医師男も
サイコーに幸せになっている現在があるから


「澪ちゃん、俺、幸せだ~」

『あたしも・・だよ。』

「だから、あの男がいる病院に行ってあいつを誘惑しないでね。」

『覚えていないわよ、あたしのことなんて。彼、ハンパなくモテるから。それに奥さん溺愛ぶりもハンパなさそうだし。』


だから、藤崎には内緒のままにする

あたしの財布の中に長年居座ったままでいる
あの男・・・有能な産科医師がくれた
色褪せて印刷された文字が読解できないぐらい古くなったコンビニレシート裏に直筆で綴られた大切なメッセージの存在を・・・


『でも、彼に救われる女性は多いわよ。あたしもそうだったから。』

「そうだな。あいつは最後まで食わなかったらしいからな。澪のこと。」


確かに最後まで食われなかったけど
カラダの奥まであの男に抱かれていたことを・・・


『なに?あの時、彼と会話したの?』

「ああ・・・ドアの前で鉢合わせしたからな。」

「嘘~ホントに?」

「ホントだよ。しかも ”ちゃんと大切にしてあげて下さい” なんて丁寧に頭下げられてな。」

あの男が
幸せはもうすぐそこだっ・・・みたいなメッセージをくれていたことを・・・





もしかしてあの男
あたし達の部屋の様子を窺っていたかもしれない藤崎の存在に気がついていたのかな?

もしそうなら、いろんな意味でスゴイ男だ



『ホント、イイ男!』

「だから、もうあいつのことは・・・」

『あなたのコトだよ♪』


今、幸せだから
だから黙っていてあげる!

ズブ濡れサイテーサイコー青二才じゃなくなった眉目秀麗産科医師夫婦の
幸せを願いながら・・・・








失った恋、捜し続ける恋、背中合わせの夜【完結】