主人と娘の微妙な会話をよそに
新聞の記事をこっそりと黙読するあたし。
《この人・・・第139回》
《東海地方初の双胎児の胎内治療法を成功させた産科医師。それだけではなく、妊婦はもちろん経産婦の支援にも力を注ぐ姿勢に多くの妊婦やその家族からも信頼を得ている。》
《中でも勤務する病院で数年前から始めた遺伝相談チームの一員としても出生前診断において臨床心理士と連携しながら心の支援も行うことにも注目されている。》
《「患者さんの心のケアを丁寧にしてくれるので公私ともに本当に助けられている」と彼が穏やかな顔でそう語るのは臨床心理士で彼の奥様でもある伶菜さんのこと。》
あれっ?
伶菜さんって・・・
あの、レイな・・・さん?
《多忙を極める彼のかけがえのない時間。それは子供たちと遊ぶ時間。それと奥様お手製のメロンパンを病院の屋上で忙しい業務の合間に一緒に食べる時間だそうだ。》
『ああ~!!!!見つかったんだ。本命彼女。しかも奥さんになってる!!!!』
娘と夫に自分の異変を知られたくなくて記事を黙読していたはずなのに
嬉しさのあまり、つい大きな声を挙げてしまった。
『よかった。ちゃんと見つかって・・・』
「なんでお前が嬉しそうな顔してるんだよ。」
『だって、あの男が・・・』
異変の原因が完全にバレたあたしを
夫が見逃さないはずがない
「あの夜・・・そろそろ忘れてもらおうか。澪」
『えっ?』
「芽衣が部活に出かけたら、リベンジしに行くぞ。あの部屋に。」
『はい?』
「今日はデートだ。濃密、濃厚、濃い、どろどろになるまで濃~いヤツな。」
『濃い、濃い、しつコイって!』
久しぶりに夫婦となった藤崎と一緒にお出かけすることになった。
行先はもちろん
あたしが不倫相手だった中原元課長にフラれたあの日
ズブ濡れサイテーサイコー青二才イケメン男を拾って慰められたあの夜に抱かれた秘密の部屋。