『ほらっ、邪魔になるから、もう出よう!』
その場の空気を読んだあたしは難しい顔をしたままの藤崎の手を引いて、ホテルの玄関のほうに向かって廊下を進む。
「痛いって。」
『だって、さすがに、こんなところをとろとろ歩いているわけにはいかないでしょ?誰がいるかわからないのに。』
悪友とヤッてしまったという誤解されそうな今のこの状況。
そのせいで変な気まずさを感じ、先を急ぐあたしは更に藤崎の手を強く引くのに、その手には抵抗感を感じる。
そうやってようやく辿り着いたホテル玄関。
運よくホテルの外の歩道には誰もいない様子。
今のうちにここから出てしまいたいあたしは
『もう、いい加減に早く歩いてって』
完全に立ち止まってしまった藤崎を急かそうとまた強い力で彼の手を引いたのに
ピッ!
藤崎はあたしに引かれている反対の手で
ホテルの部屋選択ボタンを勢いよく押していた。
それもさっきまで、あたしとズブ濡れサイテーサイコー青二才男がいて
おそらく現在清掃中である部屋の隣の部屋のボタンを。
『はっ?』
「今日、会社は遅刻だっ!」
『なんで?』
「・・・闘わないといけない勝負がここにある。」
『は~っ?! 何言ってんのよ。』
「極上イケメンに遊ばれたお前に、いかに俺が本気かということを知ってもらわないといけない。」
どういうコト?!