『青二才男?!・・・なんだ~。昨日のあたしのおとなの社会見学中、起きていたのか~。』


昨夜真夜中のあたしの奇行を彼に気付かれていたことに今更ながら恥ずかしさを感じる。


『たった一夜の関係を持っただけの女に、こんなに優しいメッセージ残すとか、どこまで律儀なの?』

あたしは苦笑いしながら、置かれていた1万円ではなく、そのレシートを財布の中に大切にしまった。


『もう、1万円置いてくとか、学生がすることじゃないし・・・でも大学まで押し掛けるのも迷惑だろうから、有り難くホテル代にさせてもらおう。』


あたしは自動精算機にその1万円を入れ、ひとりで会計を済ませ、ホテルのドアを勢いよく開けた。


『きっと、もうすぐ幸せ・・か~。』


彼が綴ったレシート裏のメッセージを噛みしめながら。



その数秒後。




「・・・氷室。」

軽々と開けた筈のドアがドンという音とともに急に重くなって。



『えっ?あたし?』

「痛っ!そうだよ。」

『だれ?』

今度はその声がするほうにドアがぐっと引かれ。


『行きずりの男、拾うなんて・・・しかもちゃっかりイケメンを拾うとか・・お前、どんだけ立ち直り早いんだよ。』

「えっ?藤崎?!」


会社の同期の藤崎が、明らかに眠そうな顔、緩ませたままのネクタイ姿でドアノブを引いたままそこに立っていた。