バックハグ体勢のまま意識を手放してしまったあたしは今日も仕事があるクセにラブホテルの一室で朝を迎えた。
分厚いカーテンの隙間から漏れた光の眩しさで目を覚ました。

布団の中にいるのに、なんだかひんやりする。
なぜか確認しようと寝返りを打っても、いるはずの男の姿がない。


『あれっ?夢だった?』


慌てて布団から出ても彼の姿が見当たらない。
ソファーに置いたままだった彼の鞄も見当たらない。


『やっぱり逃げられたか~。』


そう呟きながら自分の携帯電話で時刻を確認しようとソファーに近づいた時。
傍に置いてあるローテーブルの上に、コンビニのレシートと1万円が置かれていた。

所々ボールペンらしきインクのシミらしき黒い点が裏写りしているレシートを手に取ると、
それの裏側には達筆な文字が刻まれていて。


【レイさん・・・俺を見つけてくれてありがとう。
 俺にいろいろ教えてくれてありがとう。
 これからは女性を泣かせないように努力する。
 そんな大切なことを俺に教えてくれたレイさんはきっと幸せになれる。
 それはきっともうそこにある。 
 誰よりもレイさんが幸せになることを祈っています。   青二才男】