『あっ、あたしのケータイ、アラームかけたままだった。』


眠っている彼が明日の朝、アラームの音で無理矢理起こされないようにと
ソファーに置いたままの鞄の中に入っている携帯電話を取り出そうとした。



その瞬間。



『しまった。彼の鞄、落とした!!!!』


うっかりソファーから落としてしまった彼の鞄から滑り落ちたもの。


『ん?やっぱり学生か~。マズイ。学生、食べちゃった・・・・けど、こいつはモテる。間違いない。』


それは学生証
精悍な顔立ちの、ずぶ濡れでない男の写真付き。


『名古屋医科大学?!・・・えっ、まさかの医者のタマゴ?!』


それによってズブ濡れサイテーサイコー男の正体を知ってしまった。



『汚してしまった。まだ青い医者のタマゴを・・・フリーターの兄ちゃんにしては品があると思ったんだよね~。』


ちょっと予想外の物と人を拾ってしまったらしい


『本命女子学生も、本命には至っていない彼に恋する女子学生も・・・あたしのおかげで泣かされなくなるといいけどね・・・。ホント、罪作りなオトコ!!!』


彼が眠っていることをいいことに
再び布団の中に潜り込み、今夜の彼が犯した優しさ溢れる罪への仕返しに彼の鼻をつんつんしてやった。


『最後までイクのを堪えるなら、早く本命を捕まえて、最後までイケよ。この青二才が!!!』


調子に乗ったあたしは彼の鼻を押し上げ ”ブタ鼻!!!” と言って笑った。


そんなことをしていたらさすがに彼の眠りを妨げたようで寝返りを打ち始めたから
寝ているフリをした。

そうしたら、まさかのバックハグ体勢に。


『寝返りしてハグするとか、ホント、あたしをどうしたいのよ!!! 今度こそ、がっつり食ってやる?』


そんな悪態をつきながら、彼のあたたかい体温を感じたあたしはそのまま目を閉じた。