「・・・レイさん。」


首筋に指を滑らながら小さくあたしの名前を呟く彼。
滑り落ちた指の感触と名前を呼ぶ低い声に
背中がぞくりとする。


「・・・レイ。」


あたしの名前を呼び捨てにしながら、優しく胸に触れて彼の手によって
あたしの体の奥でぐらぐらと沸き立つ感覚が膨れ始める。


「・・・・・レイ。」


甘い声であたしを呼ぶその声。
お腹から太ももにかけて、さっきと変わりのない優しいキスをゆっくりと落とし続ける彼。


あたしを傷つけるかもしれないという彼の言葉に
そんなことないという否定の言葉が頭を過った瞬間。


「レイ・・・・・」


切なげにレイと口にした彼が
ようやくあたしをじっと見つめてから目を閉じ、


『はっ、、、あっ、、、、あン』


あたしの繊細で鋭敏な感覚が宿る場所に
そっと舌を下ろし、ゆっくりとそこを這わせた。


ひたすら与えられる甘い痺れ
自分の名前を呼ばれながら、果てしなく愛撫され続ける喜び
呼吸までもをぴったり合わせてくれながら体の奥まで貫かれる快感


不倫という許されない恋に溺れていたあたし
ただ本能を満たすためだけの道具のように乱暴に抱かれていたあたし
こんな抱かれ方があることなんて知らなかった


傷つけてしまうかもしれない
その意味がわからなくなるぐらい
あたしは大切に抱かれていた。


でも、今のこの快楽は、今夜だけという約束のもとで成り立っていたわけで。



『もうダメ・・・あたし。もう・・・あっ・・』

あたしが快楽の波に完全に溺れてしまっても


『・・・レイ・・な・・・』

彼は切なげな声を漏らしながら、溺れそうになるのを敢えて止めた。



彼が発した

間違いを犯してしまうかもしれない
傷付けてしまうかもしれない

それらの意味が見えてしまった気がした。