キスを落とされている背中越しに彼にそう訴えた。
「・・・・・・・」
その瞬間、止まるキス。
お願いなんかしてはいけなかった
求めてなんかしてはいけなかった
今晩だけの関係に
何かを見出そうとなんかしてはいけなかった
そう思ったあたしは
お湯が溢れ出しているジャグジーバスから逃げるように外へ出ようとした。
それなのに
「・・・・レイ・・さん?」
『えっ?』
信じられないみたいに小さな声でそう言いながら、彼はあたしの手をくいっと引いた。
『きゃっ!』
その瞬間。
あたしは勢い余って、ジャグジーバスの中の・・彼の腕の中に吸い込まれるように引き寄せられた。
「俺・・・レイさんを傷付けてしまうかもしれません。」
さっきと唇同士の反発状態とは対照的に
ぴったりとくっつく肌と肌。
浮力が働いているであろう今の状況でも
お互いの胸の鼓動が重なり合っていることまでもわかってしまって。
『それでもいい。今夜だけ・・・今だけでもいい。あなたが欲しい。』
お互いの弱さをお互いに感じてしまったあたしたち。
あたしはバスの中で彼に抱きかかえられ、濡れた体のまま
普段の生活では決して触れることがないクイーンサイズのベッドへ
彼と一緒に潜り込んだ。