――僕の人生は何だったんだ?


 先ほどの自身への問いかけに、今なら胸を張って僕は応えることができる。


 ――子供の命を助けることができた。


 人生の締めくくりに、ただそれだけで悪い人生じゃなかったと……心の底からそう思える。


 ――そんな風に思える自分に育ててくれてありがとう。父さん、母さん。


 妹は結婚したし、旦那さんは僕なんかと違って社会的立場もある……立派な人だ。

 もう、あの子には何の心配もいらない。

 僕自身も独身だし、後顧に憂いなんて、何もない。

 なら、死ぬ間際に人を一人救えたのなら……それができたなら上等だ。

 後悔なんて、何もない。

 ねえ父さん? 僕は宮沢賢治の「雨にも負けず」のような人になれたかな?


 ――そんな人になれたかな?


 そして気づけば、心はただ溢れんばかりの光に満たされ、やがて僕の意識は消え入るように大気に溶けていった。

 と、最後のその時――僕の頭の中に機械のような音声が響いた……ような……気がした。


 ――ピロリロリン♪


 これまでの飯島弘の人生を基に、転生先でのキャラクターメイキングを開始します。

 度重なる不運に対し、前向きで実直に、ひたむきな姿勢で臨んだことにより、【神々の寵愛】対象に認定されました。

 平等性の観点からも転生先にて、現世での不遇の調整を行うために強力なスキルを付与します。

 ――スキル【善行ポイントガチャ】を付与します。

 現世での善行ポイントを消費し、スキル【ガチャ】発動。

 現在の転生予定先……貧村の農民……生後二歳で大飢饉(ききん)が予想されます。リセマラします。

 次の転生先……騎士の家系……生後七歳で大国間の戦争による父親の落命が予想されます。リセマラします。

 次の転生先……獣人奴隷……リセマラします。

 次の転生先……貴族の家系……生後十歳までの不運を確認できず。適切と判断しました。

 転生ガチャ終了。

 転生先はアズガルド帝国の伯爵家としてキャラクターメイクしました。

 これにて、飯島弘は地球での人生を閉じ、アズガルド帝国での伯爵家:ローズウェル家に転生します。

 また、神々の寵愛により、生前の特性がキャラクター固有スキルとして付与されます。

 宮沢賢治【雨にも負けず】、そんな人になれたので、それを基にしたスキル群をもってキャラクターメイクを終了とします。