「篠田も入れば?」
「………えっ、」
突っ立っていたわたしに先生が声をかけてくれた。
カァッと熱くなる体。
「……でも、」
そんなに簡単に入れるものじゃない。さっきの、ハードルを跳んだときみたいに勢いよく、ぴょん、って。そんな感じで飛び込んでいくには、もう少し勇気が必要なんだと。
「先生、早く」
女子生徒に手を引っ張られた先生は、みんなの中心に。
「和葉も」
華乃に手を引っ張られたわたしは、華乃と同じ端っこに。
のどに何かが詰まってるみたいに、熱くて。痛くてヒリヒリしてる。
「はーい、撮るよ。みんな笑って」
森先生がそう言うけど、上手く笑えそうにない。
先生は、右斜めうしろの、わたしの表情なんて気にしてはいないだろう。
先生、わたし。
目立たないように、気づかれないように。メガホンの内側に、先生の名前をこっそり書きました。
うちの学校に伝わる、恋のおまじないらしいです。
でも。想いが伝わるとか、そんなことを望んでるわけじゃなくて。
ただ、書きたかったから。それだけです。
今、先生と同じ景色の中にいる。
わたしは、それだけで胸がいっぱいなんです。