「ごめんね。先生の話が終わらなくて。……和葉ちゃん?どうしたの?」
 先生と入れ違いで職員室から出てきたクラスメイトに、こぼれた涙を拭っていたところを見られてしまった。
「……風で。……さっきの、風が強くて…ゴミが入っちゃった」
「えー、大丈夫?」
「うん。大丈夫」

 どう表現したらいいのだろう。
 自分の気持ちなのに、よくわからない。
 先生を見ると、胸が熱くなる。ドキドキして、苦しくもなる。
 華乃みたいに、口にするのは怖くて。でも、人知れず散っていくのは寂しい気がして。
 好き。
 この気持ちは、恋なのか。それとも、ただの憧れなのか。
 はっきりとした答えを見つけたいのに、どっちつかずの状態で。ただ、泣きたくなる。
 誰かを好きになるって、もっとワクワクするものだと思ってたから。
 それは、たぶん。華乃の恋愛を近くで見てきたせい。
 ワクワクが溢れていて。ちょっとだけだけど、キラキラして見えて。
 もしも自分にそのときが訪れたら、きっと、そんなふうになるんだと。そう思ってたのに。