吸い込まれそうなくらい大きく、ぱっちりとした瞳。
長くて本数のあるまつ毛。
高く小さな鼻。
血色感のある唇。
ニキビ1つできていないきれいな肌。
男子とは思えないサラサラでツヤのある髪の毛。
そして、圧倒されるスタイルの良さ。
痩せているのに、不健康なガリガリでは全くなく、むしろ健康的な痩せ方。

野々村 綾、15歳。
今、帰り道のバス停で15年間生きてきた私の人生の中で一番のイケメンと出会いました。

同じ学校ではなさそう。
こんなイケメン、ウチの学校にはいなかったはず。

同い年?
いや、中3でこの大人っぽさはさすがにないか。

ベンチに座りながらもまじまじとその男子を見ていた私。
気づかれないわけがない。
その男子は、視線を感じたのか険しい顔でこっちを向いた。

「...何ですか。」

...ヤバい。
明らかに不審な目で見られている。
なんとかしないと。

「イッ、イケメンですね!めちゃくちゃ!」

「...?」

「いや、その...スタイルいいし!小顔だし!」

「...どうも。」

やった。
やってしまった。
完全に怪しまれてる。
でもそりゃそうだ。
自己紹介もせず、いきなりイケメンだなんて。
不審にも程がある。

「わっ、私は野々村 綾!...です。急に変なこと言ってしまって本当にごめんなさい。」

「...別にいいですけど。」

あら、意外に優しい。
でも絶対 いい気はしてないはず。
イケメンとかは褒め言葉だけど、見知らぬ年下の女子にいきなりイケメンですね!って言われるのとは訳が違う。


そんなことを考えていたら、バスが到着した。
バスよ、ありがとう。

バスから人が出...てこない。
どうやらここが目的地の人はいないようだ。

まわりを確認して、バスに乗り込もうとすると、ふとあの男子と目が合った。

「!!!」

私は慌てて目をそらし、いそいそとバスに乗り込もうとした...のだが。

バスの中は人で溢れかえっていた。
どうやっても乗れそうにない。

でも、ここで引き下がったらあの男子とまた2人きり。
さっきの気まずさが倍になって返ってくる。
しかも、後ろにはその男子が順番待ちしている。

ええい!
私は意を決してぎゅうぎゅう詰めのバスに乗り込んだ。
すると、後ろから男子が私に続いて乗り込んでくる。

急いで車内に入り、つり革をつかんで自分の身を安定させた。

すると...

隣にはあの男子が平然と突っ立っていた...。