「こんにちは」
 私はよろず屋に入った。

「いらっしゃいませ!」
 スライムさんはカウンターの上に現れた。

「きょうは、なにをおもとめですか?」
「薬草をひとつ」
「はい!」
 スライムさんは薬草を持ってきた。

「7ごーるどでございます」
「はい」
 私が10ゴールド硬貨を置くと、スライムさんは素早く1ゴールド硬貨を三枚置いた。

「ありがとうございました。またきてください」
 スライムさんは体を折ってあいさつをした。
 私は大きくうなずいた。
「うまくできたね」

「じゃあ、もういっかいおねがいします!」
 スライムさんは言った。
 私は薬草と1ゴールド硬貨三枚を返して、10ゴールド硬貨を返してもらった。

 今日は、スライムさんがきちんと仕事ができるように練習をしていた。薬草の値段はすっかり覚えてくれたし、受け答えもしっかりしてきた。

 私はお店に入り直す。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ!」
 スライムさんはカウンターの上に現れた。

「きょうは、なにをおもとめですか?」
「薬草をひとつ」
「はい!」
 スライムさんは薬草を持ってきた。

 私はまたお金を払って、おつりをもらう。
 スライムさんは満足そうだ。
 もうすっかりよくできた。

「じゃあ、こんなものでいいかな」
「もういっかいやりましょう!」
 スライムさんは言った。
「また?」
「よくできたので!」
 スライムさんは、練習が楽しくなってきたようだ。

 私はまたお店に入り直した。
「こんにちは」

「いらっしゃいませ!」
 スライムさんはカウンターの上に現れた。

「きょうは、なにをおもとめですか?」
「羽根帽子をください」
「はい!」

 スライムさんは薬草を持ってきた。
「7ごーるどでございます」
「薬草じゃないよ」
「え?」
「羽根帽子をくださいって言ったでしょ」
 私が言うと、スライムさんは目をぱちくりさせてから、笑った。

「ごじょうだんを」
「羽根帽子をくださいって言ったよ」
「やくそうをかう、れんしゅうじゃないですか」
 スライムさんはなおも笑う。
「練習のための練習はだめなんだよ」
「そんなばかな!」
「ちゃんと、お客さんの話を聞いていないと、もう来てくれなくなっちゃうよ」
「とれいしーさんも、もうきてくれませんか?」
 スライムさんが、ちょっと悲しそうに言う。
「私はエイムです」
「えいむさんも、もうきてくれませんか?」
「私は来るよ」
「やった!」
 スライムさんはぴょこぴょこカウンターの上を走りまわった。

「じゃあ、もう一回やる?」
「はい!」

 私はまたお店に入り直した。