よろず屋の前にスライムさんがいた。
 自分の体と同じくらいの大きさの木箱を、頭の上に乗せてお店の中に進んでいくところだ。
 重いのか、ゆっくり、ゆっくりと進んでいく。

「スライムさん?」
「ああ、えいむさん」
 スライムさんが振り返って、箱が落ちてしまった。

「あわわわ」
「あ、ごめん」
 私はかけ寄って箱を拾って、そのままお店のカウンターまで運んだ。
 中身は入っているのだろうか、と思うほど、木箱の重さしか感じられなかった。


「えいむさんは、ちからもちですね! どこできたえたんですか?」
「どこでも鍛えてないよ。スライムさんより体が大きいだけだよ。これなに?」
「おみせのまえまで、はこんでもらった、とくべつなしょうひんです」
「ふうん。そうだ、今日は薬草くださいな。お母さんが料理中に指を切っちゃって」
 私はカウンターに硬貨を置いた。

 スライムさんが目を大きく開いた。
「ゆびを? いたそうですね……」
「うん」
「そうすると、まんいちのことをかんがえて、てんしのなみだ、のほうがいいかもしれませんね……」
 スライムさんは考え込むようにした。

「天使の涙って?」
「かつて、いのちをおとしたゆうしゃを、いきかえらせるためにつかったという……」
「そんなのいいから、薬草でいいから!」
「そうですか? でも、ねんのためはだいじですよ?」
 そう言いながらも、スライムさんは薬草を出してくれた。

「おだいじに」
「ありがとう」
「そうだ、これもどうですか?」
 スライムさんは言って、さっきの木箱を開けた。


 箱の中は、ふかふかしたものが敷き詰めてあって、中央には人形のようなものがあった。
 といっても、頭のような丸い部分から、体のような棒がのびて、足のような二本の棒が生えているという、とてもかんたんなつくりのものだった。顔もない。

「これは?」
「おまもりです」
「お守り?」
「もってみてください」

 スライムさんが言うので、私はその、人形のようなものを取り出した。
 私の手にのせると、すこしはみ出るくらい大きさだった。
「それをもっていると、おまもりが、まもってくれます」
「はあ」
 どこかの国で定着している風習だろうか。

「そのかおは、しんじてませんね? よろしい、かしたまえ」
 スライムさんはちょっと偉そうに言う。
 私がスライムさんに返すと、手のないスライムさんは体の後ろ側に、めり込ませるようにしてお守りを持つと、そのままカウンターから落ちた。
「あっ!」

 どしん!

 と顔からまっすぐ床に落ちたスライムさんだったが、平気そうに私に向き直った。
「どうですか!」
「どう、って、だいじょうぶ?」
「おまもりをみてください!」

 見ると、スライムさんが持っていたお守りの頭が取れていて、ヒビが入っていた。
「ぼくのかおにかかったしょうげきが、おまもりに、うつったのです! なにかこまったことがあると、それをぜんぶ、ひきうけてくれるのです!」
「なるほど……」

 たしかに、スライムさんが落ちたとき、お守りはスライムさんの後ろ側にあった。
 お守りというよりは、身代わり、という気もするけど。

「ですから、このおまもりを、ぜひ!」
 とすると、本当に、これはすごいお守りなのでは……。

「これはこわれてしまったので、またこんどになりますが、ぜひ!」
「でも、いいよ。高いんでしょう」
「おたかくないですよ! ただ、つくるひとがきまぐれなので、なかなかつくってくれないだけで。いっこ、30ごーるどです!」
「あ、そうなんだ」
 いつになく、お手ごろだ。

「こんどまたつくってもらったら、ぜひ!」
「そっか。じゃあ、買ってみようかな」
「ぜひ!」
「うん。いつごろ?」
「うーんと、らいしゅうか、らいねんか、それくらいです!」
「え……。そんなにわからないの?」
「もしかしたら、さらいねんに」

 それを買って、母にあげて、父にもあげて、とやっていたら、私の番になるのはいつになるのかな。